概要
行動経済学の観点から、人を動かす要因や意思決定の傾向(クセ)を整理しまとめた。
人を動かす要因は外発的モチベーションと内発的モチベーションの2つである。また、人は社会的な動物であり所属する組織の影響を強く受けている。
意思決定については、各種バイアス(思考の偏り)により、複雑な情報に対し、シンプルな結論付けをする傾向にある。
お金の価値は、手に入れた方法によって変化し、利得よりも損失を嫌う。
合理的な意思決定ができる人は自分の行動を客観的に捉えることができる。
人を動かす要因について
人を動かすモチベーションは以下の2つ
・外発的モチベーション…高い賃金や社会的欲求
・内発的モチベーション…個人目標、やりがい、誇り
※外発的モチベーションについての注意点
複数の実験により、小額の金銭的報酬を支払うと被験者の意欲が低下し、全く報酬を支払わない場合よりもパフォーマンスが低下することが示されている。
これは小額の報酬によって、内発的モチベーションがクラウディング・アウト(駆逐)され、外的インセンティブが不十分であるために外発的モチベーションが働かないためである。
社会的要因の影響について
・不平等回避…人などの霊長類は有利すぎたり、不利すぎる状況を嫌う
・ピアプレッシャー…所属組織からの圧力により社会的な行動を評価する
間違いを犯してしまう考察傾向
・ヒューリスティクス…多量の情報に対し、複雑な考察をせずにシンプルに決断する
・利用可能性…普段触れている情報や簡単に手に入る情報を信用する
・代表性…物事の関連付けを短絡的に結論付ける(関連性を見つけ簡単に「同じような話だ」と決めつけたり、他者を既存の固定感に当てはめようとする傾向)
衝動的な感情反応は人類が狩猟採集をしてきた時代に最適化されている。
感情は客観的事実や数字と比較して、入手や利用が簡単であることから、感情は意思決定に影響を与えやすい。
お金に関する考察傾向
・損失回避性…損失と利得の金額が同じでも損失を被る苦しみのほうが、利得を得る喜びよりもはるかに大きい
・メンタルアカウンティング…金融に関する意思決定を整理し、評価し、追跡するのに使う一連の認知的操作
お金の価値は一律ではなくどのように稼いだのかで決まる
(働いて稼いだお金は価値が高く、宝くじに当選して手に入れたお金は価値が低い)
・報酬の時期によって脳の活性化する領域が変化する
即時的報酬の場合→原始的な衝動本能に関する領域が活性化
遅滞的報酬の場合→高次の認知機能に関連する神経領域が活性化
セルフコントロールについて
人は自らの行動をよく理解している人とそうでない人がいる。
・単純な意思決定をする「単純タイプ」
・賢明な意思決定をする「賢明タイプ」
賢明タイプはセルフコントロール能力に限界があることを理解しており、自らを強制的に建設的な方向に向かわせるように戦略を立てる。
参考
『〔エッセンシャル版〕行動経済学(早川書房)』ミシェル・バデリー 著