ロジカルシンキング(論理的思考)は万人に必要な能力である
論理的思考はビジネスだけでなく、政治や政策の判断・評価をする上においても、自分の人生の選択をする上に置いても役に立つ能力である。「なぜその事象が発生しているのか?」「なぜこの商品がヒットしているのか?」などの事実を客観的に分析し、論理的に考えることで、非論理的(感覚的)な結論よりも明らかに精度の高い答えを導き出せる。
論理的思考という行為
論理的思考は文字通り「論理」と「思考」に分けることができる。先に思考から説明する。
思考とは、ものを考えるプロセスのことである。
人はある事象に対し、自身が持つ情報や知識を照らし合わせたり、繋ぎ合わせたりすることでその事象から結論を導き出す。これが思考である。
例えば「外に出て空を見上げると、黒い雲が空を覆っている。雨が降ると思い傘を持っていく」とする。
ここでいう情報は「空を覆っている黒い雲」であり、知識は「黒い雲=雨雲」であり、結論は「傘を持っていく」である。
このように人は、情報と知識を照合することで結論を下しているのだ。
次に論理とはなんだろうか。
論理とは、「ある命題(既呈命題)から、推論によって次段階の命題が導かれている命題構造」、あるいはそうした命題構造における「既呈命題から次段階の命題を導くための思考の道筋(推論)」である。
引用元『論理的思考のコアスキル(ちくま新書)/波頭亮著』
上記の既呈命題を「根拠」、次段階の命題を「結論」、その間にあるのが「推論」だと考えると、全体の構成は「根拠→推論→結論」であり、この全体構成、あるいは推論部分が「論理」である。そして、この2つの命題(根拠と結論)は「したがって」と「なぜならば」という文脈的な繋がりがある。図にすると以下のとおりである
例えば、「賛成が過半数に達した」「この法案は可決された」という2つの命題があれば、「賛成が過半数に達した。したがって、この法案は可決された」「この法案は可決された。なぜなら賛成が過半数に達したから」という文章が成り立つ。これが論理である。
以上を踏まえ論理的思考とは、「情報と知識を照合することにより、2つの命題が『したがって』あるいは『なぜならば』という文脈的な繋がりを持つ構造を作り出すこと」と定義できる。
論理的思考に必要な3つのスキル
前段で論理的思考の概要を説明した。
次に論理的思考によって正しい結論および思考成果を得るために必要な3つのスキルを解説する。
①適切な言語化
人は思考により、情報と知識を照合して結論を導き出す。そのときに使っているのが言語である。
したがって、頭の中で想起されたイメージを的確な言葉で表すことで、精度の高い思考が可能となる。
②分ける・繋げる
思考するときに、考察対象や自分の知識を整理する必要がある。
事象や知識の情報要素を分解または接続したりすることで、新しい意味合いを得ることが思考作業である。
分けるときのポイント:次元の統一、分類基準、MECE(漏れなく、ダブりなく)
繋げるときのポイント:意味の共通項、構造の類似性(上下、前後の関係性)
③定量的な判断
論理展開の正しさの度合いを把握するために必要であるのが、定量的な判断である。
確率や統計的な観点から、構成した論理が正しいか判断する能力が必要である。